第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
少しずつ喉に流し
出て来る料理をやんわり
断りながら
鞄にチラチラ視線を送る
京治から連絡来てるかも…
携帯触りたいな…
先生の前だし
一応飲み会だし
堂々と携帯触るのも失礼になるかと
これまた我慢して数十分
女子の一人がトイレに立った
タイミングで
"私も"と席を立ち
トイレへは向かわず
ポケットの携帯に手を伸ばす
やっと触れる
そう思ったのも束の間
「姫凪ちゃんは
どこの店の人?
コンテストに出るんだっけ?」
いつの間にか追ってきてた
先生の声に携帯を
ポケットの奥に戻し
『花巻くんと同じです
コンテストにも一応…』
先生を振り返り
顔をあげ
作り笑顔で応える私の目が
「そうなんだ
頑張るね~
普段は他の店に勉強しに行ってるの?
俺の友達でさ
ヴィダルサスーンの所に弟子入りしたヤツ居てさ
技術教える子探してるんだけど
姫凪ちゃんどう?」
『え!?ヴィダル?!』
大きく見開かれた
「うん、知ってる?」
知らないわけないじゃん!
凄いじゃん!