第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
「多いわ。
鞄空っぽで来とるん?」
「…うっさい
借りは返す主義だから
文句言わず貸せよ」
会う口実は
いくら有っても
損はないじゃん
「なんで上からやねん…
貸したるから
サッサと離し」
「へいへい」
温もりを離して
少し距離を空けて歩く
「はい。
返すんは明日以降でええよ
今日は使わへんから」
たまにしか合わない目
「ほな、今度は邪魔せんといてな」
「人聞き悪い。
あそこで無理矢理ヤラれるより
俺に連れ去られる方が
マシじゃんよ
嫌がってたくせに…」
「そんな気分やなかっただけ!
無理矢理でもなんでも
治くんの隣が一番やねん
そんだけ!ほな、な!」
小いさく走り出した
背中が遠くなっていく