第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
「止め…」
「止まらないから
抱き締めてんだよ
サクラ…このまま
俺の物になっちゃえよ…」
ユックリ頬を指でなぞり
噛み締めてる唇に触れて
「好きだよ…」
甘く囁き
柔らかい唇に俺の唇を寄せる
止まらないし
止まるつもりもない
なのに
「泣かないんだ…
俺には涙も見せてくんないの?」
触れられなかった。
「泣く理由がない…
治くんは…私が好きやって言うた…
それを信じてる…から」
揺れない
曲がらない
治しか見てないサクラに
力じゃ敵わない
何かで身体を止められてる
「バカじゃね?
そうじゃないって疑ってるから
泣きそうになってたくせに」
「なってへん!
もう帰る!離して!」
「…嫌だ」
力では完璧勝てるのに
「…教科書まだ借りてねぇし
数学と家庭科と英和辞典貸して」
なに負けてんだよ、俺のバカ