
第4章 謎の微笑みを向ける美女は!?

翌日も郵便局へ向かった。また仕事かよと思ったけどいつものことだ。
午前中はお客様窓口での業務をこなす。
「ありがとうございました」
昨日も普通に終わったし今日も何事もなければいいのにな。
この日の昼食を食べようとした所僕のiPhoneが鳴った。
「何だろう?」
画面をタッチするとLINEより七瀬さんからのお誘いがあった。
『やっほー!悠真君お元気い?今度私の家に来たらごちそう作ってあげましょうか?』
っていうか普通そこ男の方から誘うだろっていうか彼も元男性だけどな。いや、今は女性だけど。
『わかった!楽しみにしてるね。今度の日曜とかどう?』
『いいわよ!じゃあお昼にね。』
七瀬さんと会うのも久しぶりだなと思った。
「ただいま」
この日の仕事が終わり僕は帰宅した。
「おかえりなさい。きゃあ」
「莉子どうした?」
僕が慌ててキッチンの方へ行くと莉子がお鍋のフタを手にあたふたしていた。
「ああー噴きこぼれてるじゃん。火を止めないと」
「ごめんなさいね。さっき急に電話が来てうっかり鍋の火を止めるの忘れてたのよ。まぁ、みそ汁はアツアツの方が美味しいっていうから」
莉子はこういうドジをたまにするのでかわいいと思う。
「ああ、うん」
僕は軽く頷いてキッチンを出ようとした。
「ねえ、今度の日曜だけど小田和正さんのコンサートあるのよね?」
しまった!僕はすっかり忘れていたのだ。いつの日か2人でコンサート聞きに行こうという話になっていたのか。
最近人気の若者だとチケットが手に入りそうにないため世代を超えて愛される歌手にしようって小田和正さんのコンサートチケット買ってたんだった。
「いやあ、それがなんか人気あるみたいでチケット取れなかった。すまん!」
ああ、こんな嘘をついちゃって申し訳ないなあ。どんなに鈍感な莉子でもさすがにこれはばれるか?
「そっか。残念だったわね。またね!」
莉子は残念そうな顔をした。
「それと今度の日曜なんだけど仕事が入っちゃって」
僕は申し訳なさそうに言った。
「そうなの?休日だって言うのにお疲れねえ。あっそうだった、郵便局は休日が不規則だったわね。かわいそうだけど頑張ってきてね」
「うん、ごめんな」
僕は気が付いたら莉子を抱きしめていた。
日曜日に不倫相手に会うなんて莉子は知らされていないのである。莉子の一言一言がなんだか切なかった。
