第23章 水色の思い出 (逆ハー)
「海に行くのはいいけど、やっぱり水着は…。バージルも泳がないんでしょ?」
「誰が泳がんと言った」
「えっ泳ぐの!?」
最後の最後まで取っておいた綱、唯一の希望は見事に切られた。
バージルはこういうお遊び的なものは嫌いだと思っていたのだが、そうでもないらしい。
「何かおかしいか」
「いやおかしくはないけど…」
「夏の暑い日にわざわざ海に行き肌を焼き火傷の症状を自ら引き起こすのは人間の行事みたいなものなのだろう」
「いやそうだけど何かさ…」
「ほら。バージルも言ってる事だし。ね?」
「う……」
もう、ここまで来ると気まずい。気まずすぎる。
一人だけ水着を着ないなんて何だか空気が読めない人みたいだ。皆行きたがっているのなら、それを妨げるよりも自分が根負けした方がいいのではないか。
いやしかし水着はない。着られない。勇気がない。
これがまた一見服のような形の水着ならともかく、完璧なビキニで最低限隠さなければいけない所だけを隠し、まるで下着なのだ。
どうしてこんな際どいものを買ってしまったのだろう、と嘆息する。
あの時の自分がわからない。もっとマシなものはいくらでもあったというのに。