第11章 声
「…」
目を開ける。声がした。
掴もうとして掴めなくて、絶望が燃えて焼けて。
気付けば涙が流れていた。
「バー…ジ…」
視線を動かせば綺麗な顔。バージルは身を起こし、の顔を覗き込んでいた。
心配そうな表情。一瞬の混乱と錯覚、思わず服を掴みかけたが、あれは夢だったのかと理解して、安堵。
現実のバージルは、夢とはまるで違う。
「どうした?」
の瞳から溢れた涙を戸惑ったように拭い、バージルは尋ねた。
その声になんだかどうしようもなく安心して。
どうしようもなく触れたくて。
腕を伸ばして抱きつく。怖い夢を見たと呟く。
背中に、温かい腕が回された。
2007/09/19