第9章 決意
「……あの、何…を…」
沈黙にたまりかねてが口を開く。
無言で笑むヒュウイに恐怖を覚えたのか、不安そうな顔をしていた。
―――たまんねぇな
ぞくりとする。
強気な彼女が見せる怯えた表情は、それはそれは魅力的で。
顔を近づければそっぽを向かれ、しかしそれでもこちらの機嫌を伺って。
そっぽを向いた隙にさらけだされた白い首筋に顔を寄せていたヒュウイは、左腕での頭を抱えると、一度だけその肌に唇を落とした。
「―――っ!」
が思わず床に片足をつき、逃げようとする。
しかしヒュウイはすかさずその足の間に膝を割り入れ、逃がさないといわんばかりに彼女の身体を寄せた。
肌が思っていたより柔らかく、押し当てた唇はその感触の余韻を残し。
甘い。
ヒュウイは唇を舐める。
顔を離すと、の頭を支えていた左手で彼女の目をすっかり覆った。
「え…ヒュ…イ、さ…」
指の隙間の光しか見えなくなったは、戸惑ってヒュウイの手に自分の手を添える。
ヒュウイは、わざと耳元で低くささやいた。
「今日あいつ、帰って来ねえから。夕飯作れ」
耳に唇が当たるほど近い。
少し舌を出せば柔らかな耳朶に触れ、は声も出せず身を固めた。
がわずかに震える。
それに優越感を感じ、そのまま耳をひと舐めする。
「ひぁっ! ぅ…」
跳び跳ねて耳を押さえる。
好みの反応。心地いい支配感。
これだからはいい。
ヒュウイは笑って手を離すと、立ち上がりながら彼女の頭を撫でるように手を置いた。
咎めるような視線も気にならない。上機嫌でその場を離れる。