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【DMC】BLUE

第9章 決意



静かに階段を降りる。
いつもと同じように、さりげなく。

リビングにはが一人座っていて、雑誌をぱらぱらとめくっていた。
物音に顔を上げ、バージルだと気付くとまた居心地が悪そうにうつむく。
気が狂いそうだ。

ちゃんと立っているのか自分でもわからないままに足を進め、ドアの前で足を止めた。
静寂。

バージルはドアノブを見つめる。
おそらく、ここにはもう戻っては来ないだろう。
迷惑をかけるだけなら。傷つけてしまうだけなら。邪魔なだけなら。

俺は一人には慣れている。だから別に、不安はない。
ただ、に―――

すまない、と。
言葉にできない。
弱い証拠。逃げている証。

逃げているという事実からも逃げ、バージルはドアノブに手をかけ、押す。
ひゅるりと風が入り込んだ。
まるで出ていくバージルを押し戻すように。

―――無駄だ。

バージルは笑む。

向かい風など、今の俺に意味はない。
決めたのだから、もう曲げない。

ドアを大きく開けた。
身体をその隙間に滑り込ませる。
冷たい風が身体にまとわりつき、わずかに顔をしかめ。

―――さよならだ。

愛しい人。


涙なんて出なかった。
ただ、離れようと決めた今ではここにいる事があまりにも苦痛で。
早く出なければ、決意が揺らぐ気がして。
身体を半ば無理矢理進め。

ドアの外に出て。
冷たい風を受け。

「…………」

ドアノブをつかんでいた手を離した、その時。

「いってらっしゃい」


目を見開いた。

まさか、と思い
思わず振り返り

手を伸ばした先で、ドアは無情に音を立てて閉まる。

冷たく閉ざされたドアをしばらくの間見つめ触れようとするが、ためらった後にぎゅっと手を握った。
身をひるがえし、歩き出す。

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