第19章 偵察
「真君。」
私は水道で顔を洗っていた緑間を見つけ、名前を呼んだ。
「ん…菜月か。」
顔を拭き、メガネをかけると私を見つめた。
「…少し…話がしたいのだよ。」
「え?」
場所を移動した。近くのバスケットコートに行き、私はベンチに座り、緑間はボールを持ち、シュート練習をしていた。
「…」
「…俺は、中学の頃、お前が嫌いだった。」
「…え!?」
話がしたいと言われ、いきなりそんなことを言われるとさすがに落ちこむ。
「…だが、それはお前がマネージャーを始めて、数日間だけだったのだよ。」
「え?」
緑間がシュートを打つと、綺麗にゴールリングに入ったボール。
「明るく、誰にでも笑顔を振りまき、正直うっとおしかったのだよ。」
「…」(な、なんか凄い悲しい…。)
これから良いことを言われるはず……なのだろうけど、すごく悲しい。
「お前は、帝光のバスケ部に入部してから、あまり人に弱さを見せなかっただろう?」
「え…う、うん…。」
皆の気持ちが沈んでしまうから…と、人前で泣いたり、弱音を吐いたりは、できるだけしなかった。
「覚えているか?何事もなく練習が終わった後、お前は1人、部室で泣いていたことを。」
「…いつ?」
「…俺も忘れたのだよ。」
「あらら…。」
自分でもあまり覚えていない。
「…俺も、お前があの時、何で泣いていたのか覚えていないのだよ。でも、いつでも、どんな時でも、誰にでも笑顔を振りまくお前でも、涙を流すのだ。と…そう思ったら不思議で仕方がなかったのだよ。」
「不思議って…そりゃ人間だから涙くらい流すよ…。」