第29章 Rey23
「ノー!誤解です!ウチワ貸してください。…ほら、ほら、また付きました!」
『ぶっ!』
火起こしにうちわで扇いでいる姿が必死すぎて私は吹き出した。
しかもそのまま大和さんに手で口を塞がれた。何故?
「ほーら、はしたない。女の子でしょ?」
耳元で呟く。
あの、一応今の私はReyなんですけど?
「仲が良いのはいいですけど、ほどほどにしてくださいね?」
「……そうだな」
『?』
◇◇◇
夕食を終えた後、私は一人で川を眺めていた。
すると誰かがやって来たのか、私は振り向く。
そこにいたのは一織だった。
「いいんですかこんなところにいて」
『少し考えてたから…』
「これからの事ですか?」
メンバーとは離れているし、私のことを話すにはちょうどいいかもしれない。
成人組はお酒入っててこっちには気づいていないみたいだし。
『うん。私は近々デビューする。そのために音無零は事務所を辞めるになった』
「やっぱりそう言うことですか」
やっぱり一織は察していた様だった。
私をプロデュースしたいと言っていた一織の扱いはどうなってしまうんだろう。
『デビューシングルのB面はどうするのかなって』
「インパクトを出すには完全に女性目線の曲ですね」
『え…それってつまり』
「女性キーのバラードなんでどうでしょう。貴女の喉の問題もあるでしょうし」
『あれ…私、喉の話したことあった…?』
知ってるのは多分万理さんだけだと思うんだけど…。
高音を出すとしばらく声が出なくなるって言うのもほぼ改善したはず。
あとは無理をしなければいいだけ。
「私を舐めているんですか!?貴女の歌声は武器なんですからアイドルなら自覚を持ってください」
『は、はい…』
「あ」
大和さんがこっちを見た。
缶ビールを片手にこっちに向かってくる。
「零ちゃーん」
「二階堂さんここに音無さんはいません。わかりますよね」
「知ってる」
『大和さんは私のこと知ってるよ』
「あれだけベッタリならわかりますよ」
大和さんが異常だって事だよね…。
なんだかんだで一緒にいる時間が多いのが大和さんだし。
「イチー零に近づいて欲しくないなー」
「別に近づいてなんかいませんけど」
『普通に喋ってるだけだし…わっ!?』