第3章 Rey1
誰に聞かれるかもわかったものではないし、がっかりされるのがオチ。
そんなことにまたなったら、トラウマどころでは済まない。
「社長室は防音済みだよ。それに給料はどうしようか」
『職権乱用だ…』
仕方なく私は歌うことにした。
あの日歌ってた曲を軽く口ずさんだ。
『〜♪』
「ストップ」
社長が手を叩いて私を止めた。
歌えって言ってみたり止めてみたりなんなの。
「君の実力はこんなものじゃないだろう」
『…ッ、そんなこと…』
わかってる。
本気を出したくても周りの目を気にして歌えない。
男より男みたいと馬鹿にされる。
それが自分の歌声が嫌いな理由だった。
「僕たちのことは気にしないで自由に歌ってみなさい」
『……』
私は大きく息を吸って吐いた。
こうなったら本気で歌ってやろう。そう思った。
『〜、〜〜♪ーーッッ!』
『はぁ…はぁっ』
久しぶりに本気になって歌ったせいなのか動悸が激しい。
でもそれ以上に気持ちが良かった。
「す、凄い…」
「改善の余地はまだあるけど、思った通りだ」
『なに、がですか…』
「使用していない部屋が残っているからそこでレッスンしなさい。鍵は君に預ける」
レッスン……?
そんな話…してない…。
『私は…アイドルには…』
「零さん…私、貴方の歌声をみんなに届けたいです。すごくカッコよくて…その…」
「彼のサポート、できるかい?」
彼…社長が言ってるのはReyの事だろう。
7人のマネージャーをやっている時点で手一杯だと思う。
「やりたいです」
『ちょ…』
そんな返事していいんですか!?
安請け合いはいけないことだって教えてもらってないんですかね。
「そう言うと思ったよ」
『私の意見をk』
「注意点なんだけど、デビューするまでは性別を明かさずに売り込むことが前提だ。それと、他のメンバーには別人だと思わせる様に努力してもらいたい。ネタバラシはデビュー時が最高だね」
『勝手に決めないでくd』
「性別問わずで人気出そうです!」
一番流されているのはもしかしなくても私だ。
もう…諦めるしかないのかも。