第2章 Rey
「スカウトと言っても、すぐにデビューさせる訳じゃない。事務所に来るだけ来て見てくれないかな」
『……信じられないと思ったらすぐ帰ります』
「それでも構わない。原石が消えるのはもったいないけどね」
磨けば光る…?そう言ってるのだろうか?
半信半疑で私は小鳥遊プロダクションの社長…小鳥遊音晴について行くことにした。
◇◇◇
『本当に事務所があった…』
「そこは信じて欲しかったかな。社長室まで案内するよ」
あまり大きいとは言えない建物の中へ案内されるも、人の気配がしない。
この事務所大丈夫なのだろうか。
「さ、入って」
『ぁ、はい…失礼、します』
椅子を勧められるも、座る気にはなれなかった。
すぐにでも移動できるように…っていう自衛からだったのかも知れないけど。
『……』
「気づいたかも知れないけど、人手が足りなくてね」
『誰もいませんよね』
「ちょうど出払っているからね。君にはアイドルになってもらう前に、事務を担当して欲しいんだ」
『…はい???』
何を言ってるんだ。
スカウトってそっちのスカウトだったのだろうか。
「ちゃんと働いた分は給料も支払うけどどうかな?」
『アイドルよりもそっちの方が魅力的なんですけど』
「本当は事務には女の子が良かったんだけど、贅沢は言っていられないからね」
あぁ…またか。
これのせいで私は歌声も容姿も好きになんてなれない。
『私女ですけど』
「…え?」
『なんなら身分証見せましょうか?』
「いいや、結構だよ。いいね、それで行こう」
一体何に納得しているのか。
何か良からぬことをされるのかも知れない。
「デビューするまで女の子ってこと黙っててくれるかな」
『なんでですか。そもそもデビューなんてするとは一言も言ってないですけど』
「面白そうだからね!」
すごく楽しそうに笑ってる…敵に回したくないタイプだ。
でもここにいれば…給料も入って来るし…
『研修期間ってことには出来ないですか?』
「そうだね。3ヶ月間は研修期間として事務に入ってもらうよ。これから忙しくなる」
『忙しくなる…?』
「男性アイドルグループのデビュー予定だからね」