第42章 訪問
「それで、だ。条件のことだ」
「忘れてなかったんですね……」
「忘れるわけなかと」
前の本丸に行くための切符と思えばどんなことでも我慢すべきだよね。
……嫌なことだったら断ろう。
「わかりました。それで、その条件とは」
「血を寄越せ」
「……はじめの頃は血を採ってもいいかな、とか優しく聞いてくれてたのに寄越せ、ですか……へぇ、ふーん……」
「な、なんや……ええやろ!血なんて増えるやん!」
「採られたら減るんですよ。そんな何度も採られてたら貧血になりますよ」
ぐぬぬ、と何も言い返せないでいる政府の人から隣のお手伝い……部下の人に目を向けると胡座をかいてゆらゆらしている政府の人とは違い正座をして背筋を伸ばして座っている。
どちらが上司か疑いたくなるな……。
「先輩、血なんて何するんですか……」
「ん?ほら、あれだ……検査!」
「検査って……他の審神者にも同じことを?」
「は……お前、何言ってんの。そんなのするわけないじゃん」
あ、今あの人イラッとした。
職場での政府の人のことはあまり知らないけど裏表はなく我が道を突き進んでいるのだろうな……自由人、きっとそういうことだ。
何を考えているかわからない、本当に信用していいのかすら疑いたくなる人種ではあるけど私はこの人のおかげでここにいる。
審神者になれた。
疑うのは失礼ってやつだろうな。
「あの、政府の人……」
「……来る」
「はい……?」
政府の人の一言に首をかしげていると、部屋の外から誰かが走ってくる音が聞こえたと思うと、ひょこっと可愛い乱ちゃんが現れた。
え、かわいい
乱「あーるじさん、遊ぼ?」
「え、かわいい……じゃなくて……珍しいね。私を誘うなんて」
乱「みんなが主さんと仲良くなりたいって言ってるんだけどきっかけがないからって……もしかしてお邪魔だった?」
乱ちゃんは、二人を見て申し訳なさそうに私の方を見たが私はニコッと笑う。
「大丈夫だよ。乱ちゃん達の用の方が私には重要だし」
「え、ひど……」
他人様より我が子を優先、これ当然。