爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第5章 悪意 中國山地
兵介は戸締りをキチンとしたか納得するのに少し時間がかかる。気にしたら気にし続ける。そういう人間だった。
だからこそ、再びここにやって来てしまう。
閑散とした地。ジャングルとは言わないが、コンクリートの木々が次第に神戸という街に植えられて行くに連れて、ここの地には異様な感覚が起きる。
福原の「無名」区。呼ばれ方の通り、名無しの地である。ここはかつての快楽の園、そして多くの女達と弱者の怨嗟を溜め込んだ因果の地。歓楽街「濯(すす)ぎの街」、その跡地である。
「未だに手もつかない、か。そりゃそうか」
分かりきった事。しかし、それが何より率直な感想だった。開発計画地という官営の看板が徐々に朽ちの兆しを見せているのが証左であった。今はコンクリートで土を覆って、痕跡を潰しているその地で見た物を山路は一生忘れない。
そして、二度と日の目を得られなくなるまでに嬲(なぶ)り尽くされた女達の姿は忘れたくても忘れられない。抗う気も起きぬほどに人の手に掛かった人間というのはこうまで無惨であるのか。ただそれを思い出すと、褥(しとね)で苦痛に身をよがらせながら客の足音を聞いていた女達の事なぞ露知らず、下卑(げび)た顔で「濯ぎの街」を茶化していた一昔の自分が無性に恥ずかしく、堪らない。
兵介は真綾の事を不意に思い出し、頭を振った。かつて、この地を焼き討ちにした時、真綾の顔が女達に重なって怒りに震えたのは紛れもなく事実である。真綾とてこうならなかったわけではない。時の巡り合わせ次第では有り得ないわけではなかったのである。
どうせ悔いるに決まっているのに、この青年は愚かしい事を浮かべる癖があった。真綾がでは彼女達のようになったなら、果たして自分は平然としていられるのか。彼女達の親のように、娘を売りに出して逃げ出すような人間ではない。兵介は自分をそう思っている。では、真綾はどうだろう?耐えられるのか、彼女達のように? そんなに強いわけがない。きっと……
「強くある必要は無い。強くあって灌がれる穢れは無い。強いからこそ、その身は腐ったのだ」
「そんな……腐ってなんか」
「梅毒に冒された身だ。花も散り、鼻も落ちた身の有り様は、腐ったという方が適切かと思うがね」
「そん……、っ!?」