第4章 彩花。
「起きろ!!まだ仕事があるだろう!!」
キラキラと光る千代は幸せそうに微笑んでいた。乱暴に揺するとふわりと、瞼をあげ微笑む。いつもの仮面のような微笑みではなく嬉しそうに、柔らかに、花のように。
「ずっと会いたかったの、貴方が、幸せになれたのなら、これ以上の幸せはないわ、大好きよ、えぇ、大好き戩華」
するりと腕を首に絡ませる。
「今度は貴方と夢を見たいわ、ふふ、貴方と一緒の夢を見続けたいわ⋯戩華、私を信じてくれて、呪いをかけてくれてありがとう、とてもとても幸せ」
透けていく身体。
ぎゅっと抱きしめる。
あぁ、懐かしい。
懐かしい。
この温もりを知っている気がした。
「千代、俺は、まだ幸せではない」
ガバッと離れて目を丸くする。
小首をかしげる彼女。
「まだ、?たりな、い?なぁに?何が足りないの?私が叶えてあげるわ、約束したでしょう?私は、貴方だけの官吏になるって」
誇らしげに微笑むから。
そんな約束していない。
そんな言葉交わしていない。
「お前を私は愛したことは無い」
千代は目を丸くしてくすくす笑う。
「知ってるわ、なぁに?確認?それでも、貴方がいきてる間栗花落姫様と、二人で愛してくれるといったから、ふふ、姫様の心配症も、貴方の無茶振りも、大好き」
ふと頬を優しく撫でられる。
「私が消えても誰もわたしを思い出すこともない、貴方は知ってるでしょ、だから、貴方は愛してくれた、知ってるわ、私を幸せにしてくれた、たくさんたくさん!ねぇ、戩華、どうかしら、幸せでしょう?ねぇねぇたくさん褒めてちょうだい」
子供のように無邪気に笑う。
千代が消えたら記憶から消える。
だから、愛してくれた。
嬉しそうに微笑む。
そっと手を伸ばすと頭を差し出すから、怖くなる。
「ねぇ!戩華!撫でて?ねぇねぇ!」
撫でてしまえば消えるのだろう?
それで、完成されるこの世界。