第4章 彩花。
口を開こうと見て分かってしまう。
「いや、いい、その言葉は誰もが聞きたくはない。様子を見てくる、喧嘩ばかりしてるなよ」
栗花落は髪の毛を靡かせ、部屋を後にする。
あの子は言った、仕事をサボっていたと。
分かりすぎている。
可笑しい程に。
ああ、まるで存在自体が戩華のための妃だ。
静まる部屋。止める者がいたらかこそ喧嘩ができた。その者が去ってしまい旺季は奥歯を噛み締めた。
深くソファーに腰掛け額を抑えた。
四年経っているというのに彼女は何も変わらず、ただ、毛の色が無くなり美しかった黒髪は真っ白になっていた。
それはまるで、死したようで。
胸騒ぎがした。
「⋯お前の血縁者でもあるまい、何をそうカリカリする」
王の言葉にゆるりと顔を上げる。
本心からそう問うのだろう。
「知っている気がしたからですよ、ただ、心のどこかであの娘が貴方の言葉で一喜一憂し、貴方の死に涙し嘆くのを、知っている気がしたからですよ。」
目を閉じると浮かび上がる。
旺季様、今回も殺してしまったのですね。
旺季様、ごめんなさい。
お手を汚させて、ごめんなさい、ごめんなさい旺季様。
そう言って喉元に刃を突きつけている千代。美しい姫は涙して王の足元で微笑む。
今度は上手くやるから、置いていかないでください。
何度も死して、何度も謝罪する、そんなあの娘を知っている気がした。
『旺季様!たまには私めに稽古をつけて頂きたい!』
『酔ってしまわれたのですか?仕方ありません、少し散歩にまいりましょう、立てますか?』
『しゅ、じょう?あ、あぁ⋯また、私は間に合わなかったのですね⋯うっうぅぁああああああああああああ』
子供のように泣く姿を、苦しみや悲しみを堪える姿を、悲しげに微笑むだけの姿を知っている気がした。
「⋯あの娘は確かに貴方からの愛を望ま無いでしょう。なら、あなたは最後まであの娘に期待してはいけない。そうでなくてはいけない。」
「⋯⋯」
もどかしい。
だから。
だから言った。
「⋯あの娘を愛しては居ないのでしょう。子供を作る必要も無い、あの娘は愛していると押し通すでしょう」
安堵と怒りで疲れたのか。
頭が痛い。
家に帰って休みたい。
朝、千代とご飯を食べて遅れますねと二人で顔を合わせゆっくりと1日を迎えたい。