第2章 彩香。
「なるほどならば、貴様は鈴蘭はそこまで読んでいた事になるな、溺死と言う結末を」
「いいえ、溺死はあくまで想定外、ですが自害は想定内でしょう。それだけでも多くの人物が動き過ぎています。小さなイザコザにしては政に癒着し過ぎています。それを今から探すことは可能です。そんな事を私はしたくはありません。清苑公子を完璧な罪人にする前に哀れな罪人として私が受け取ると言っているのですよ」
強い口調だった。
「流罪にした方があいつはまだ喜ぶだろうに」
「させても構いませんよ、私はすぐに拾いに行きます。結末は変わりません。あの子が私を憎もうが殺そうが、あの子には⋯⋯ええ、私の嫌いな、天命を担ってもらわねばなりませんから」
「天命、だと?それは誰のためのものだ」
「清苑公子の幸ある生涯の為でございます」
真っ直ぐと見据える燃えるような紅。
それは、縹家のものではない。見覚えのある紅。
そうだ、彼女はあの兄弟の姉。
この世は彼女を忘れ、彼女は紅を捨てた。
それでも、凛とする馬鹿らしい優しさ。
何処か似ていた、よく、会う弟に。
「良かろう。余としても、遅かれ早かれの事案だ。そう計らうとしよう、だがな、先のように一生お前は凶手からアレを守らねばならぬと理解しろ」
「⋯はい」
「して、劉輝はどうする?到底使えぬだろう」
「それは私の関わることではございません。私は、御史台として証拠犯罪を断罪し、いかに血を流さないかに努めるのが、上官の口癖です。」
「なら、お前はその上官に似て拾い物をするのが好きらしいな」
千代は目を丸くして苦笑いを浮かべた。小さく、えぇと呟く。
「せっかくです、主上。これを気にお考え下さい。女人官吏について。」
睨み据えるような瞳。でも、貴方は迷っている。言葉がすぐに出ない。
「くだらん」
そう吐き捨てたのを見て微笑む。
「それは、失礼申し上げました」