第2章 彩香。
「殺す?私が公子達を?何故?」
「⋯」
「殺すわけありません。あの二人は特別ですよ。名君になるのは劉輝公子でしょうけど。」
「劉輝、がか?」
「ええ、清苑公子は少し厄介なのですよ。けれど、殺すわけはありません。二人共聡明でこの国には無くてはなりません」
「お前は時々不思議な言い回しをするな、まるで知っているような言い方をする。」
「主上こそ、面白い事を言うのですね。」
「清苑をどうする?」
「妙案がありますよ」
「ほう、聞こうか」
「簡単です。私の息子にします」
姉弟は呆れた声を叫びあげ、王は眉間を寄せた。
「どうやって追い出す?」
「それこそ簡単です、先の後宮放火は鈴蘭様の御両親の目論見とし、貴族権剥奪、そして、唯一の彼等の切り札である公子は中立である縹家の傘下に加わる、その証として、わたしの息子になる。正統性は保持されていますね。そして、それでも足りぬと言うのなら余罪をつけましょう。ここからは我等の十八番です。劉輝の母君を殺したのは鈴蘭様でしょう。」
目をぱちくりぱちくりとする。
「母君は劇薬による錯乱に死した、その劇薬はたくみに仕組まれ母君の手元に及んだ、そう、第二妾妃からと。そうして伝わった事は裏付けられています。そして、その中身は劇薬だったとも伺っております。なれば、簡単ではありませんか、美貌一つで後宮に入った彼女が美しく聡明と評判な彼女からの美容液に手をつけないはずがない。これが、他の妾妃なら違ったでしょうね、安易なことはしなかったけれど、すると、彼女は確信していた。そして思惑とおり事は進んだ」
「⋯⋯違うな、あいつの死は溺死だ」
「ええ、錯乱した反動で母君からの預かり物を池に落としたのでしょう、そして彼女はそのまま泳げぬと言うのに飛び込んだ。劇薬が無ければそう易易と溺死などするもんですか、彼女は癇癪玉のようで、誰より貴方に執着をしていた、後宮で後見人も無しに上がり孤独と老化に怯えあなたの愛を枯渇していた、そんな些細な事でも人は死ぬのですよ」