第11章 才華。
「ふぐっ⋯!?⋯!」
かくんと首が下を向く感覚に目が覚める。
戩華はだらだらくっちゃくっちゃさも美味しくなさそうに餅を口にしている。
私の目の前にはわらび餅。
「はれ、いつのまに⋯起こしてくださっても良いではありませんか」
「誘拐された奴の言葉とは思えんな」
「ん⋯」
お水を飲み、ふと外を見る。
「あ、あの⋯私何時間寝ていましたか?」
「二時だろうな」
「!?な、なぜ起こさなかったのですか!」
「そろそろ食え、この汁粉も5杯目だぞ」
「ごは、5杯!?食べ過ぎです!」
戩華が食べていた汁粉の器を奪い平らげてぱくぱくとわらび餅を口に入れる。
「腹もだいぶ膨れたな」
う、お汁粉美味しい⋯!
けれど、何故そんなに⋯
ふと、まわりを見渡せばどうやら、店員の娘が代わる代わるおかわりは?と聞いたのだろう。私が眠っていたからか、汁粉を汁粉をと繰り返したのだろう。
「さ、店を出ましょう!」
「何を焦る必要がある?お前がそんな必要は無いと言ったのだろうが」
千代は立ち上がり、戩華の手を掴む。
懐から財布を取り出しお会計を済ませ手を引っ張り店を出る。
「起こした方が早いでしょう!」
「⋯⋯お前が寝たからだろう」
「えぇ、それは申し訳なく思います。ですが、この場合貴方が5杯目も食すより私を起こした方が効率が良いでしょうと」
「お前の寝顔を見ながら汁粉を食うのも悪くは無いなと思ってな 」
「そんなことで⋯?!貴方は!!糖尿病になりますよ!」
「まぁ、そこそこ美味かったからな」
5杯も食ってそこそこ!?
この男は⋯深く深呼吸をして戩華を見る。
全く悪びれていない男、真っ直ぐの瞳はいつも変わらない。
「あぁ、次の行く場所は⋯」
次もあるらしい。