第11章 才華。
「成程、わかりました」
蒼姫と静蘭は辺りを見渡し驚く。
旺季と羽羽は栗花落の反応を伺っていたが、二人は違った。
部屋のものが動いている。
正確には減っている。
「戩華が戻るまで私達はやる事があるんだ、蒼姫丁度いい、リオウを連れて羽羽殿にしてもらいたい事があるんだが⋯出来るね?」
「は、はい」
なんだろうと思いながら羽羽に書類を渡す栗花落。
ざっと呼んだ羽羽は目を見開いた。
ブツブツと言うと、小さな羽羽の手は蒼姫を掴む。
「誠に宜しいのですね?」
「それが、私の願いだ」
「⋯かしこました⋯⋯公主様、行きましょう」
「へ?は、はい、えっ?」
「時間があまりない逢魔の刻迄には」
「なんと!」
「大丈夫、蒼姫は素質はあるよ」
「急ぎ参りますぞ!」
ハテナを浮かべた蒼姫を引き連れ立ち去る羽羽。
旺季は何の事だと問う。
「静蘭、お前は藍家の末っ子を捕まえてくるんだ」
「へ!?」
「そのへんをちょろちょろしている、最近何かと蒼姫の傍におるからな。先日蒼姫と共に持ち帰った箱を取りに行け」
「で、ですが、瑠花様のお屋敷には」
「アレは特別だ、時間が無い行け」
「はい!」
尻を叩かれた気分になり、礼をひとつ残し部屋を出る静蘭。
旺季は深くため息をつく。
「どういう事なのですか、姉上」
「⋯⋯旺季⋯戩華が足を運ぶ程の事なんだよ。」
「は?」
「誰の目も話も信じす、手も足も借りず、自分が先でありたいと願った。」
「は、ぁ?」
「少し気難しい娘ではあるが、とても、私には愛おしい我が子のようなんだよ」
優しく微笑む姉の姿に誰のことを言っているのか知っている気がした。
「お前も手伝うか?模様替えだ」
「結構です、それより蒼姫には何を?」
にやりと、笑みを浮かべる。
「恨まれ役だ」
悪の巣窟は少し居心地が悪く、広く狭いこの部屋に澄んだ風が入り込み驚く。
この場所で変わらず居られないのは、恐らく娘達だけではないのだろう。