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【彩雲国物語】彩華。

第10章 彩稼。


 「⋯戩華王と、近くに住んでいるというのは誠なのですか?」
 「ええ、そうですよ。今度百合姫といらして下さいな」
 そう言えば黎深は目を丸くして複雑そうな顔をしていた。弟の夫の顔ににやけてしまう。
 やきもち焼きの黎深だ。
 くすくす笑うと、ふと、空を見る。
 「あぁ、大変。あの人お昼も夜も食べてないわ」
 起き上がるが、黎深に座らされる。
 「その⋯姉上。」
 「はぁい?」
 「もう、良いではありませんか」
 その言葉に鳳珠は眉間を寄せていた。何を意味するかなど解っている。
 優しくて焼餅焼きで我儘で。独占欲が強い。
 「私もそう思います。だから心配することなんて無いですよ」
 黎深の力は要らないのよ、そう言われてしまいしょんぼりしていた。
 邵可はそれを聞いて入れなかった。
 栗花落は言っていた。
 
 妃は愛するために生きているだけ。
 戩華王をただ支え愛するため。
 そして、戩華の幸せを護るため。
 黎深やお前のようにやきもち焼きの心や、愛ゆえの我儘なんて、彼女は持ち合わせていないんだ。ずっと、出会った時から戩華の為の妃。
 そして、戩華の幸せのための人。
 
 それは、戩華が幸せだと言ってしまえば不要になり居なくなるのだろう。張り巡らされた呪詛。禍々しい程に身体を支配し、何故平気なのか不思議なほど。
 そう、彼女には死ではなく消える。
 その言葉がなぜだかぴったりな気がした。
 
 「千代、遅い」
 
 ふわりと香った香りに顔を上げるとそこには戩華が立っていた。
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