第29章 可愛いアナタ
「ただいまぁ~」
翔ちゃんの声が聞こえ玄関に迎えに出た。
「お帰り翔ちゃん…お疲れさま」
翔ちゃんはニコッと笑うと靴を脱いで俺に抱きついた。
「雅紀もお疲れさま」
そう言ってギュッと腕に力を込めるとすぐに離れていく。
「雅紀、今日のごはんは何?」
「今日はね、翔ちゃんが好きなあんかけ炒飯だよ」
「やった!雅紀、大好き。急いで着替えてくるね?」
満面の笑みで2階の自室に向かう翔ちゃん。
好物を用意されてるだけで子供のような反応を示す。こんな可愛い翔ちゃんの姿を知っているのは俺だけだよなぁ。
俺と翔ちゃんのふたり生活が始まったのは今から7年前。
俺の母ちゃんと翔ちゃんの母親が姉妹で、元々俺と翔ちゃんは仲が良かった。
母親同士が仲のいい姉妹だったから良く家に遊びに行ってたし、夏休みなんかは子供だけでお互いの家に一週間ずつ泊まりに行って、夏休みの半分は一緒に過ごしてた。
ひとりっ子同士なせいか本当の兄弟のような関係だったんだ。
俺が翔ちゃんの家にお世話になり始めたのは大学進学がきっかけ。
隣の県に住んでいる俺が東京の大学に通うことになり、翔ちゃんの母親が『家に下宿しなさいよ』って言ってくれた。
通えない距離じゃないから始めは遠慮して断ったんだけど、翔ちゃんが『おいでよ』って笑顔で誘ってくれたから『じゃあ、お願いします』ってなったんだ。