第10章 新旧双黒+織田作/楽しい文化祭
【体育館へ向かう】
私は一人、体育館へとやって来た。
明日はここでクラスのみんなと劇を行うのである。
舞台となるステージの上には、すでに明日の準備として大道具がセットされていた。
私が演じるのはヒロインのお姫様。
ちゃんと上手く出来るだろうか…。
ステージに上がり、見渡す。
明日はそこにお客様が入るんだよね…。
既に緊張が込み上げてきた。
「どうしたんだい?」
舞台袖から声が聞こえて振り向くと
そこには太宰くんが佇んでいた。
「太宰くん、どうしてここに…?」
「煩い中也から逃げていたら月尾さんの姿が見えてね。明日の予行演習かい?」
「うん…。明日大丈夫かなって心配になって…。」
「確か、劇の台本はうちの委員長が作ったんだっけ? それで心配を…」
「ちがうよー(笑) 台本は凄く面白いから、劇を行うのが楽しみだよ♪ ただ、私が、上手く演じられるかなって心配で…。」
「なんだ、そんな事」
「え…?」
太宰くんは近くまで来て、ふわっと頭を撫でてくれた。
「中也から聞いているよ、キミがとても一生懸命に練習を行っていたこと。自信を持って臨めば良い」
そう言って笑いかけてくれると何故だろう。
不安が嘘のように飛んで行ってしまうのです。
「…ありがとう、太宰くん」
「どう致しまして。さぁ、もう遅いから帰ろう?」
「うん!」
明日、頑張るぞ♪
そして、文化祭当日を迎えた。
私たちの行う劇は、委員長が書いてくれたオリジナルストーリー。
政治のため、政略結婚を余儀なくされたお姫様(エリス姫)を、幼馴染の青年が助けに来るというストーリーである。
「姫よ、良いな…全ては我が国の為じゃ…」
「わかっております、お父様」
そして、隣国の王子に扮する中原くんが舞台袖から登場する。
その瞬間の歓声ったら凄い(笑)
うん、カッコいいもんなぁ中原くん。
白い王子様姿も様になってる。
「エリス様、お手をこちらに。私が必ずや幸せに致します」
中也くんが跪き、手を差し伸べてくれる。
その手を重ねる時、幼馴染の青年役の田中君が…
「よく言うよね。ちびっ子のクセに」
…ん??
舞台袖からサッと登場し、素早く私の手を取り自らの後ろに匿う太宰くん。
…え?
そんなの台本には無かったんだけど…!!??