第1章 [HQ]やっちゃんと。①
(どこかで見たことがあると思ったら、青城だったんだ…!)
仁花の脳内に、試合会場にいた生徒たちの姿が浮かぶ。
先の試合で、烏野はさんざん苦しめられた。
青城の主将でありセッターでもある彼は、その強気なセットアップや鋭い洞察力はもちろん、サーブは腕がもげそうな程の威力と制御という印象がある。
影山の中学の先輩だというが、どちらかというと自分のポジションでのプレーに長けている選手もいる中で、"穴がない"ところが2人は似ていると仁花は感じていた。
「ダイオウサマ?」
及川は目を丸くしている。
心の中の声が思わず漏れてしまったらしい。
(私ってば本人の前で失礼なァァァァァ!!)
「ごめんなさいごめんなさい!!この粗相はどうかお許しをぉぉぉ」
腰を90度以上曲げて反復する。
「えっ、まって俺なんでそんなに怖がられてんの!?」
『カビーン!』
「って、ストップストップ!とにかく顔上げて!」
両肩をがっしり押さえられ、驚いて顔を上げる。
「いい?俺には"おいかわとおる"っていうちゃーんとした名前があるの!
チビちゃんといいチビマネちゃんといい、烏野の1年は俺を大王様だと思ってるわけ?」
はっ、まさか飛雄の嫌がらせ…!?とぷりぷり文句を言っている。
…おいかわ…、とおる…。
(…じゃあさっきの徹くんて、及川さんのことだったんだ…!)
「……あのぅ、たぶんさっき…女の子たちが探してましたけど…」
「ん?ああ、今日はこれから用事があるから、学校からつけてきた子たちを撒いてるんだ」
僅かに溜め息を漏らす。
(学校から!?…ホントにファンクラブとかあるのかも…)
何人もの可愛い女の子たちが追っかけているのだから、
てっきり芸能人だと思っていたのだが。