第1章 [HQ]やっちゃんと。①
平日の、学校帰りの学生やら帰宅中のサラリーマンが多い時間帯。
いつもなら放課後は部活があるけど、今日は監督も武田先生も、OBの方も誰も練習を見られない、ということで、
急遽部活は「休み」ということになってしまった。
大人が監督出来ない場合は部活動は禁止、というのがうちの高校の決まり事らしい。
高校生といえど未成年の子どもたちだけでは万が一、があってからでは遅いというのが教師の考えだろう。
(でも…、あの2人が大人しく引き下がるとは思えないなあ…)
体育館で主将からこのことを聞かされた時、日向は
「自主練ならいいんですよね!?朝も昼も誰もいないし!」
「放課後は手の空く先生方が減る。何かあってからじゃ対応できない。それにこれは学校のルールなんだから、どの部活だって例外なく守る必要があるんだよ」
主将に冷静に諭され、不満たっぷりだった日向と影山は
ぐっ、と言葉を飲み込んだ。
2人はちらりと顔を見合わせ、
(バレないように、20分だけこっそりやんぞ)
(おう)
そんな2人の心の声が聞こえたような気がした沢村は、
「…ちなみに、バレなきゃちょっとやっても大丈夫とか考えているかもしれないが」
小さなため息と共に告げると、2人はビクッと肩を揺らし、
「教頭先生がこういうのに厳しいってこと…わかるよな?」
主将の笑顔を見た途端、「ハイ」と小さく答えた。
(…まあ、心配いらないか)
普段温厚な人のああいうのって…きっとすごく効果をはっきするんだなぁ、と感心してしまう。