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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)




『ケイ君、ヤバイ、あたし、緊張してきた。』

『だからなんで綾が緊張すんだよ。』

『トイレ、行ってきていい?』

『ダメだろ、我慢しろ!
綾がいない間に親父さん来たら
俺、どーしよーもねぇじゃん!』

こそこそと二人で
そんなやりとりをしていたら、
障子に人影が映る。

『入るよ。』

低い声がして、障子が開いた。

スマートで、落ち着いた、
そして真面目で知的な雰囲気の、

…なんというか、
この家とかあの奥さんとか、
この娘とかがとてもしっくりくる…男性だ。



あぁ、そうなのか。
一瞬で頭の中が真っ白になる。

綾がおやじさんのことを
"厳しい"とか"頑固親父"とか言うから
もっと…なんというか…タヌキジジイを
俺は勝手に想像してて、

だから
鷲匠監督やうちのジジイを想像して
いろいろシミュレーションしてきたけど、

この人は、全然、違う。

家族を一番大事にし、
今まで誠実に働いてきた、
"立派な一家の大黒柱"だ。



勝ち負けじゃないとわかっているけど、
まだ何も始まっていないけど、

…今の俺では、
男として勝てない気がする。



でも、もう、
出直しというわけにはいかない。

さっきまでとは違った意味で、
腹を据えるしかねぇ。



この勝負は、言い争いではない。



この人は"綾の父親"として。
俺は"綾の彼氏"として。

どちらが深く、
彼女を愛し、守る覚悟があるか。

そういう勝負なんだな、ということが
頭ではなく肌感覚で伝わってくる。



うっすらと感じる"この先"の展開に

身震いをする思いで、

俺は、自然と座布団からおり、
綾の父親を見上げた。


つられて綾も、
座布団から降りる。


目が合う。
敵意ではなく、
俺を知りたい、という
心ある、だけど強い目線。

無意識に、口が、動いた。


『初めまして。
綾さんと、2年ほど
お付き合いさせて頂いてます、
烏養 繋心と言います。』

『綾の、父です。
娘がいつも、お世話になってます。
今日はわざわざ来ていただいて、
すみませんね。
どうぞ、座布団、使って。』

…こうして、
綾の親父さんと
男として向かい合う時間が、


始まった。



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