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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第12章 二人の宝物 三章


「信長様、徳姫を寝かせて戻りますね。」

「ああ。」
立ち上がろうとする凛を引き寄せ
お酒のせいで紅く染まった頬に口付ける。

「早く帰ってこい。」

「‥はいっ。」


そんな両親を横目で見た徳姫が
チラリと横を見上げると、信玄が
ウインクをして微笑んだ。

よしっと気合を入れて立ち上がると
謙信の横まで移動した徳姫は、深呼吸をする。

「‥?」
驚きの色を浮かべる二色の瞳を見つめて
徳姫はにっこりと微笑んだ。

「謙信様。」

「‥なんだ。」

武将達が固唾を呑んで見守る中、
信玄だけが悠々と酒を煽る。

「きょうはありがとうございました。」

「‥ああ。」
礼なら要らん、と謙信が呟く。

「徳にはまだ母上のような
みりょくはありませんが‥」

「‥ああ。」

信長がカチャリと刀を取る。

「母上よりうつくしくなるので、」

「‥そうか。」

凛があらあら、と微笑む。

「その時は、徳をもらってくださいね。」

「‥ああ。」

謙信は杯に口を付け、ピタリと動きを止める。


「‥‥なんだと?」

振り向いた時には徳姫は居らず、
既に凛の手を引いて
広間を出ようとしている。

「みなさま、おやすみなさい!」
ピシャンと音がして襖が閉まる。




「‥言い逃げかよ!」
幸村のツッコミを皮切りに
ハッと武将達が我に帰る。

「いやあ、モテモテだなあ。謙信?」
ポンポンと肩を叩く信玄の手を払いのけ
傍らに置いていた刀を抜き放つ。

――ギィンッ!

ギリギリと鍔迫り合いになると
目の前には口端を上げる魔王の姿。

「人の物に手を出すとはいい度胸だ。」

「‥ふん。知った事か。」


「おっ!信長様がやる気だな!」
俺も!と刀を握る政宗の前に
佐助がゆらりと立ちはだかる。

「徳さんの好物を教えて下さい。」
早急に春日山に用意しないと‥と
メガネの奥の瞳が揺れる。

「知りたきゃ力ずくで聞けよ!」


「‥ッ御館様!」

悠々と酒を呑む信玄に向かられた刃を
幸村が受け止める。

「‥あんた徳姫に何言ったの?」

「お前に教える義理はない。」


「煽ってんじゃねー!よッ!」
と、力任せに幸村が家康を押し返す。

やれやれと信玄が重たい腰を上げると
家康の隣に秀吉が並び立つ。

「俺も興味があるなあ。」


―宴は、最高潮を迎えた。
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