第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【姿、見つめて…】
良く、考えろ。
私は辺りを見渡し何か試し書きが出来る物がないか探す。
この時代は崩した文字。
無理だと分かりつつも何とか書けないかと目論む。
ふと、彼女が置いて行った湯呑が目に付いた。
私は床が張ってある場所に茶を垂らし、指で伸ばす。
それと同時に廊下側から彼女の声がし、障子が開いた。
「!!」
私は驚き湯呑を盛大に零した。
それに伴い襦袢の袖が茶の色にじわりと染まる。
彼女の視線が私の袖口に止まり、あぁ、お着替えを用意しますね、と言い、また踵を返し再び部屋を後にした。
私は申し訳なく思うも、ホッと息をつく。
静まり返った部屋で一人考える。
無い頭をフル回転し、キャパオーバーに成りそうな程考えた。
しかし、たどり着く結果はずっと同じで " 何故 "としか言い様がなかった。
それから直ぐに彼女が戻り、着替えの前に改めて自己紹介をした。