第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【意、己の願い】
「すまねぇ…!」
もう、良いの…。
仕方ないと思う…
だって、自分でも自分が解らないから…。
着たことも、見た事のない綺麗な着物、着付け方、文字の読み書き、それに…
あの刀…。
私のいた時代では本当に書物やテレビの中の事。
そして私がトリップしたのはゲーム、アニメの世界、言わば二次元の世界。
仮に土方さんや左之さんに『私は未来から来ました』と言った所で何になる。
皆が皆、口を揃えてこう言うだろう。
頭が可笑しい…と。
そして私がこの世界に介入した為に物語に支障が見えて来ている事は確かだ。
その支障を最低限に留める為にも今此処で私は死んだ方が良いのかも知れない。
身元も何もかもはっきりしない私はそうなっても仕方ないし、今まで何もなかった事が不思議なのだから…。
「左之、さん…貴方が謝る事は、ないの…」
私は左之さんの着物をぎゅっと握り締め、精一杯の笑顔で答えた。
「けどっ…俺も新選組の人間だ」
責任は俺にもある…!
そう言った彼は私を支えていた手に力を込めると同時に私を抱き寄せた。
「っ…、あ、貴方は…」
貴方は優しいのね…。
「ねえ、左之さん…」
途切れ途切れで言葉を紡ぐと抱きしめた身体を離し何だと応えてくれた左之さんに私はこう言った。
「…っ!」
私が言った言葉に対して、左之さんは大きく瞳を見開く。
もう、これしかないの…!