第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
月を見ると思い浮かぶのはアナタ。
だけど、アナタは霞がかっていて誰だか分からない。
でも、今なら分かる気がする…。
何となく、何となくだけど、貴方の様な気がするの。
美しいお月様。
アナタは誰を探しているの…。
「前から知っているような気がします…」
その瞬間、わたしは銀の月に包まれた。
「んっ!!」
呼吸が止まる。
時間が止まる。
わたしは石田さんにキスをされていた。
それに気付いたのは呼吸が止まってからの事。
あれ…
わたし、知っている…?
何…この感じ…。
少しだけ荒々しい、だけど優しさも兼ね備えている感情的なキス…。
「ん…」
自然と艶のある声が唇の隙間から溢れる。
切なくも甘い互いの舌が混ざり合い、わたしは彼を求める。
「っ…ふ…ぁ」
どうして…。
わたしは重治さんが好き。
重治さんを愛している筈なんだ。
でも、
でも…
拒めない…。
この気持ち、知っている…?
何処で感じた?
「お前に、触れても良いだろうか…」
いつもより低い声で石田さんはわたしに囁く。
誰かに許してと言う様に…。
この表情、セリフ、全てが何処かで感じた事がある。
思い出せ…。
何処だ…。
見つめ合うわたしと石田さん。
石田さんの表情が何とも言えなかった。
" どうして、そんなに、儚く微笑むのでしょうか "
これは、わたしのセリフ…?
互いの瞳が揺れる。
わたしの思考回路はぐちゃぐちゃだ。
でも、身体は勝手に動いて石田さんを求める。
「ん…っ」
わたしは…
私は…
ワタシは…
堕ちる。