第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
そして暫くすると大阪城に石田さんがわたしを迎えに来た。
「じゃあ、気を付けるんだよ」
三成君の言う事は良く聞くように。
後、姫らしくと迄は言わないが、女性らしく振舞う事、あと…
「分かってますって!」
非常に長くなりそうだったので、途中で重治さんの話を遮った。
たまに重治さんはお母さんみたいな事を言う。
わたしはもう子供じゃないし、それくらいわかってますよーだ。
心の中で彼に向かってあっかんべーをする。
だが、心が読める彼には筒抜け。
「ふふふ。帰って来たら、覚えて置いてね」
やはり、悪態がバレてた…。
「じゃあ、三成君頼んだよ…」
わたしは石田に向き直り、宜しくお願いしますと頭を下げる。
そして石田さんを見ると彼の表情が思わしくなかった。
良く分からずに重治さんの方へ向くと理由を教えてくれた。
「一応君は姫だから、ね…」
最後の同意はわたしに対してか、石田さんに対してか分からなかったけど、姫と言う立場は非常に面倒くさいと分かった。
そして、余り時間がないと言ってわたし達を追い出すかの様に先を急がせる。
「あぁ、忘れてたよ」
そう重治さんは言ってわたしの手を掴み少し強引に抱き寄せた。
「っ…!」
そして見つめ合いながら一言囁き、今度こそ籠に詰め込まれ追い出された。
揺れる籠の中、彼の温もりが残る唇に手を添える。
重治さんってあんなに強引だったっけ?
わたしが姫となった宴の時もそうだったし…。
何を考えているか分からないけど、わたしは幸せだから何だって良いや。
あぁ、結局行ってらっしゃいも言えなかったし、最後の返事も出来なかった。
「わたしも、……」
重治さん…。
" 愛しているよ… "