第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
しかし、その姿は見るも無惨だった。
「…っ!!」
何故、何故こんな姿を…!
「っ!こんな事してる場合ではない!」
家康君、感謝するよ。と、僕は動揺を隠しながらそう言い、彼女を労るように抱き上げ医者を呼んだ。
医務室へ連れて行くよりも僕の部屋の方が近い。それにこれ以上揺らして傷が深くなると厄介だ。
自室に着くと彼女を一旦降ろし、布団を引く。
そして清潔な布で綺麗に泥等を拭い去る。
これは酷い…。
手足は縄で繋がれていたのか、抵抗した跡がくっきりと残っていた。
そして太腿だ。
綺麗な短刀であればまだ処置の仕様があるのだが、生憎そんな気遣いはない。
そして…。
どうして、この様な形で君に出逢ってしまったのだろう。
どうして、君がこのような目に合わなければならなかったのか…。
僕は今日と言う日を心底憎んだ。
泥等に紛れて独特な臭いを放つモノ。
胸が締め付けられた。
「恐かったろうに…」
僕は何度も、何度も彼女の髪を撫でた。
途中、彼女を綺麗にする為の布が足りなくなり、女中に有りっ丈の布と湯を用意する様にと命じる。
その間にも刀が刺されたままの足からはしきりに鉄の匂いが漂う。
このままでは不味い……。
「医者はっ!!」
僕は布と湯を持って来た女中に怒鳴りつけた。
その女中は顔を青ざめさせ、申し訳御座いませんと平伏す。
するともう一人の女中が震えながら僕に声かけた。
「た、竹中様…私共が…」
その女中が相手は女子でございます、と恐る恐る僕に代われと言い、山積みになった布に手を掛け彼女に触れようとした。
「彼女に指一本でも触れて見ろ」
殺してやる…