第17章 我儘に甘えて(秀吉)
あったかい…
それに…凄く安心する匂い…
気持ちよくて目を開けたくない。
一言で言うなら、何だか幸せな温もりに包まれている気がする。
自分の身体を包み込む温度と香り、
そして、優しく頭を往復する動き…
だんだん覚醒してくる意識とともに、自分が眠っていた事に気付く。
あれ?私、なんで…
「んっ…」
微睡みの中でボーッと考えていると、
不意に唇に柔らかい感触と、少しの温度を感じた。
え?
驚いて、そうっと眼を開けてみる。
『悪い…起こしちまったか…』
ぼんやりと霞む視界には、それでも絶対に見間違うはずのない、
大好きな人の顔がいっぱいに広がった。
「秀吉…さん」
『あぁ…いるよ、ここに』
大好きな声が聞こえてきたかと思えば、
今度は瞼に触れるだけの口付けが落とされた。
「なん…で…」
まだ混乱している頭で、どうにか思い出そうとする。
私、急に目眩がして政宗が運んでくれて…
家康が薬を…それで…
秀吉さんが!
そこで、パッと眼を見開くと、漸く状況が把握できた。
どうやら、秀吉が自分を抱きしめながら、頭を撫でている…という事が。
「秀吉さん!」
身を離そうとする愛だったが、
その身体はしっかりと抱きしめられて動けない。
『駄目だ。離れるな』
「…え?」
『悪かったな…気づいてやれなくて』
「なっ…ん…」
急に謝られて、慌ててしまう。
『だから、これはお詫びのしるしだ』
そう言うと秀吉は、
撫でていた頭を、自分の胸に押し付けるように抱え込んだ。
抱きすくめた腕の中から
「ふふふ…」
と小さな笑い声が漏れた。
『何で笑ってるんだ?』
不思議そうに気けば、
「凄く幸せだなぁって思って…。
秀吉さんがいない間も、ずっとこうしたかったから」
と、答えが返ってくる。