第94章 今を生きる
蜂須賀さんを微笑ましく見守る石切丸さんは、まるで菩薩みたいな顔をしてるんだぞ。
「それでそれで?虎徹は誘拐されてたのか?続きが知りたいんだぞ!」
「誘拐はされてなかったな。正確には、虎徹が誘拐しようとしてたんだ。…祠の前へ行くと、満面の笑みの浦島と状況が飲み込めていないとでもいうような顔をした贋作のあいつが居たよ。」
「あぁ…何となく解ったよ。ふふ、君も大変だねぇ。」
はぁ、と溜め息をついて握った襷に目を落とした蜂須賀さんが続ける。
「その後気付いた時には、三人で遠征先に居たよ。行ってらっしゃーい!って声がして振り向いたら、門の向こうへ俺を押し込む主がいい顔して笑ってたなぁ。‥あの時は頭に来たけど、どうも提案したのは浦島らしくてね、怒る事も出来ずに三人で延暦寺を見回ったってわけさ。」