第94章 今を生きる
「あの笑った顔と、優しいし声と安心する温もり…全てが愛しいんです。色々な事を知って尚更、今までずっと頑張っていた主殿の傍に居たい、そう思うんですよ。さんの傍に‥」
さん、さん??
「一兄、さんって何だ?」
これは言ってしまっても大丈夫なのでしたよね‥?と口元に手を当てて小さく呟いてから、俺を見る。
「…本丸の全員が知っている訳ではないし、私は極力二人だけの時にしか使わないようにしていますが、つい口が滑ってしまいました‥今のは、主殿のお名前です。隠している訳でもないですが、包丁も無闇矢鱈に言ってはいけませんよ?」
「ほーい!そっかぁ、主ってって言うのか!可愛い名前なんだぞ!ぴったりだな!」