第94章 今を生きる
「ふっ、そうですか。頑張って下さいね、では…」
「あ!ちょっとお願い!広間の前を歩く時だけでいいから、陰に隠して歩いてほしいんだぞ!」
宗三さんの後ろに回って、内番服の前掛けの裾を掴む。こうして誰かに隠れていけば、見付からずに行けるぞ!
「いいんですか?この配置で。‥見え見えなんですよ。」
「え?わわっ!」
脇で縛っていた、たすき掛けを外して着物の袖を広げると、その袖で俺を隠す。
「これでいいですね、行きますよ?」
「あ、ありがとうなんだぞ!」
宗三さんは優しい。初めて見た時は冷たい印象だったけど、小夜と話してるのを見ててそんな事ないんだって思った。
「宗三さん、一兄みたいだ!」
「一期一振ですか?ふふ、初めて言われましたよ。」