第93章 白妙
「…で、小判の数を数えとったのに持っていこうとするけん、思わず蓋にしがみついたら、気付いた時には小判箱の中におったと。」
「博多、怪我が無かったのは良かったです。ですが、油断してはいけませんよ?あそこには敵も出るのですから。」
詳しい話は主の帰りを待つ間に、と主の自室へやって来た俺の前で、博多が一期一振に説教されている。まぁ、当然だな。
「でも、ボク昨日の運んでた物の中に居たなんて気付かなかったよ〜」
「小判の中に埋まっとったけん、身動きしきらんっちゃもん。俺も焦ったばい!…にしても、主はまだ帰らんと?」
正座をしていた脚が痺れたのか、脚をぐっと伸ばしてぱたぱたと動かす。
「もう少し待て、暫くすれば戻られる筈だ。」
ふーん?と首を傾げた博が部屋を見回しながら、主は女の人なんやね‥と呟いた。