第92章 夜桜
「‥なぁ、主?」
腕を掴んでいた手が、つっと主ちゃんの手の甲を滑って、指に絡む。ぎゅっと手を握り締めて、下から覗く様に顔を近付けた。
「な、な、みかっ!!?」
「じっちゃん!?」
次の瞬間、ぱっと手を離して、仕返しだ。と三日月さんが笑う。
「主から、あの部屋への出入りは禁止と言われていたからなぁ。冗談さ、安心しろ。」
着物の袖で口元を隠した三日月さんの、悪戯っぽいが妖艶な瞳からは本心は読み取れない。
「び、びっくりするでしょ!早く私の部屋行って着替えてよね!みっちゃん、次行くよ!」
そう言って、赤くなった頬を両手で覆った主ちゃんが部屋を飛び出して行った。
「はぁ。三日月さん、からかい過ぎたらだめじゃないか‥」
にっこり微笑んだ三日月さんが傍へ来て、僕の耳に囁く。