第92章 夜桜
「夜桜ねぇ…主、それはどんな所なんだい?」
「え?えっとね、昔お城があった場所が今公園になってるんだけど、そこを囲む様に桜の並木道があるの。夜になると、赤と桃の提灯に光が灯って、桜が赤く見えるんだよ。それがお堀の水面に映ってきらきらして、とっても綺麗なんだぁ。今頃散り始めた桜の花弁で絨毯が出来てるだろうな‥」
きっと歌仙も喜ぶと思うの、と主ちゃんが微笑むと、その顔を見た彼がやれやれ‥と肩を竦めて見せる。
「そんな良い笑顔で話す程の夜桜なら僕も興味があるよ。それに、水面に揺れる赤い夜桜か…うん、とても風流じゃないか。」
じゃあ…と小さく呟いた主の頭を撫でて、僕に任せてくれ、と頷く。
「‥だが、君達も手伝ってくれよ?そこの入り口に隠れてる君達だよ?」
えっ?全く気付かなかった。振り向くと、いつの間にかそこに居た数人がしずしずと入ってくる。