第90章 残り香

どのくらいそうしていただろう…頭の奥がくらくらして気持ちが良くて、ひたすら熱い舌の動きに夢中になり、呼吸も忘れて口付けていた。

とん、と胸を叩かれて目を開くと、目を潤ませて苦しそうにするさんが映る。

「っ…はぁ、っは‥」

唇を離すと、思い切り息を吸い込む。

私の腕に預けられた身体は、もう自力で立っていられない程に溶けて、熱い。

だらしなく開いた唇から垂れるどちらの物か解らない唾液を、舌で舐め取り微笑むと、それを目で追っていたさんの耳へ口を寄せる。

「もう……宜しいですよね？」

‥何が？

ふふ、こんな状態でそんな事を言うのは野暮というものですよね。胸にある手を取り、私の肩へと回す。