第2章 この腕の中の君 ※【黒尾鉄朗 続編】
嘘……。
思わぬ優くんの告白。
これ……真に受けていいのかな……。
だって、酔ってるし……。
「酔ってても、適当なことなんか言わない。信じて」
顔に出てたのかな…。
私の言いたいことがわかったみたい。
さっきと同じ瞳を、また向けられる。
「優くん…。でも…私には…」
「黒尾…でしょ?」
「うん…」
優くんの表情が歪む。
私の体はまた彼の腕に捕まった。
そして聞こえてきたのは、絞り出すような声。
「ほんっと腹立つ…。俺が欲しいものの前には、いつもあいつがいる…」
「え……」
「初めて告白した女の子には、黒尾のことが好きだから、ってフラれて…。バレーもそう。音駒に負けて、春高行き逃すし。今回だって……何で黒尾の彼女なんだろ…」
「……」
ひとり言みたいに、ポツリポツリと呟く。
こんな時、何て言ったらいいのかわからない…。
慰めたって、きっと無神経な言葉しか出てこない気がする。
かと言って、このまま黙ってることが正しいのかもわからない。
正しい、とかそういう話でもないのかもしれないけど。
どうしよう……。
どうしよう……。
私の恋愛のスペックなんて、所詮こんなものなんだよね。
「でも……」
低い声が空気を震わせる。
頭を上げ、瞳に影を落として、何か言いたげに少しだけ唇を開いた。
と思ったら……
ジッと私の顔を覗き込み、ゆっくりと綺麗に弧を描くそれ。
「でも、簡単に引いたりしませんから」
「え…?」
「男と女なんて、うまく続いていく関係もあれば…」
「……」
「終わっちゃう関係だって、あるでしょう?」
何…それ…
私が、てっちゃんと別れるって…?
そんなこと、あり得ない。
「私たちは…別れないよ」
「絶対?」
「絶対」
「恋愛において、 "絶対" って言葉ほど不確かなものはないと思ってるんですけど」
「そんなこと…」
そんなこと、ない。
確かに "絶対" なんてすごく曖昧なものだけど。
私たちは大丈夫…だよね…?
「とにかく、俺の気持ちは伝えたんで」
「……」
「改めて、よろしくお願いしますね。梨央さん」