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日章旗のデューズオフ

第16章 【拾参】時透&実弥(鬼滅/最強最弱な隊士)



数本の木刀が刺さった背負い籠から使い込みの若そうな一本を抜き取り、腰ベルトの日輪刀の上──悲鳴嶼の羽織を端折る下緒の隙間へ差し込んでいると、朗らかに微笑む霞柱殿が顔を覗き込んできた。
態々前屈みに成って俺を見上げる姿に、顳顬がびくびくと痙攣を起こす。身長差を鑑みても、せずとも済む姿勢だというのに。俺の逆鱗を撫でると分かってやっているのだろう。
「嬉しいよ。僕の提案に乗ってくれて」
「……」
死をも恐れぬ純然たる好奇心と、それが満たされようとする喜びを少しも隠さない瑞々しい狂気が、俺の中で形成された『殺戮を恐れる鬼殺隊士』としての自尊心と、泥を啜ってでも生き延びてきた『殺戮を求める忍』としての矜持を酷く刺激する。忌諱に触れる事も厭わずに嫌悪感を隠さぬ相貌で睥睨したところで、少年に堪えた様子はない。
「時透。あまり名前を追い詰めんなよ?」
「……宇髄さん」
艶めかしい低音が鼓膜を浚うのと同時に、視界の端で銀朱の離弁花が咲き綻ぶ。そして、生薬と軽やかな白檀の香りが鼻腔に纏わり付いたかと思うと、欠いてなお逞しい左腕が俺の肩を抱いてきた。背負い籠の後ろで竹刀を杖代わりに立位していた天元が、知らぬ間に距離を詰めてきたようだった。
「……宇髄さんと名前さんって随分親しげですよね。どういう関係なんですか」
「なんだ、気になんのか?」
棘の有る言葉への意趣返しかのように天元の腕が俺の肩へ深く沈み込むと、霞柱殿の眉宇が分かり易く歪み、煌々明々としていた琥珀糖の双眸から光が剥落する。代わりに宿るのは不快感を如実に反映させた仄暗い炎。
割って入って来た天元を睨め付ける瞬間に燃え上がったのを見逃さなかった。それは遊び相手を見つけた狂犬が、不意に現れた個体に『獲物』を横取りされた際に見せる、静かなれども苛烈な威嚇に他ならない。
「鬼殺隊で義弟を探してると言ってあったろ。それが此奴だ。まぁ、お前は記憶が曖昧だったみたいだから、俺が人探ししてる事も忘れちまってたかもしれないが」
「……名前さんが、宇髄さんの義弟?」

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