第26章 父さん
はちを自分の部屋で待機させ、リビングへと向かう。
案の定、何やら電話をしている父さんがいた。
すこし苛ついているようだ。
最悪の状況だな
【赤司父】
「─だから! 言っているだろう!
この取引を成功させなければ、売り上げが一位ではなくなってしまう!」
────まだ言っているのか
嫌な汗が滲む。
緊張。不安。期待。願い。
届くだろうか。父さんに。
【赤司父】
「もういい───明日、朝イチでまた交渉しに行け」
雑に切られた電話。
携帯をソファに投げる。
ドッカと座り込んだ父さんに、俺は近づいた。
「───父さん」
【赤司父】
「・・・征十郎か。帰ってきていたんだな」
「はい。・・・父さんも、今日は早いんですね」
【赤司父】
「取引が早く終わっただけだ。
・・・───なにか用か?」
冷たい目だ。
苛立っているんだろう。
だが、屈しない。屈したくない。
言え。自分の口で───。
「───見ていて、見苦しい」
【赤司父】
「───・・・なんだと・・・?」
第一声がこれだと誰でも驚くだろう。
だが、今の父さんに当てはまる言葉はこれしかなかった。
「・・・常にいちばん。それは少し見苦しいものだと、俺は思う」
【赤司父】
「・・・お前、年上に向かって、」
「・・・もう、いいじゃないか。
───常に先頭に立っていたって、虚しくなってくるだけだ」
【赤司父】
「・・・・・・・いつからそんなこと言うようになった?
・・・今更、そんなことお前に言われてもどうともしない。
───常に先頭。これ以上ない願いだろう」
「────俺はそんなこと願ってない!!!!!
・・・勝手に・・・、俺の願いまで決めつけないでくれ・・・」