第13章 お食事会
みつが、顔を真っ赤にして口をパクパクしている。
餌を求める池の鯉、もしくは…。
「酸素不足の金魚。」
赤葦さんの言った、それのようだ。
「赤葦、彼女に対して厳しくね?」
「俺が優しくしたい相手はりらだけです。」
「ブレねぇな。」
「そこは、変わる気がないので。」
「彼女の為に変わってやれよ…。」
「無理ですね。」
突っ込みを入れたのは秋紀で、そのまま会話が弾んできた。
ここが、私達の実家である事など忘れたのか、普通の飲み会でするような話し方である。
それを、うちの父が許してくれるか不安になって、顔色を伺ったけど。
「そういう話は、乾杯の後にしろ。」
寧ろ、この状態を喜んでいるかのような笑顔で、一旦2人を止めた。
「お父さんねー。りらもみつも、イイ人捕まえたから嬉しいのよー。」
今の会話だけなら、赤葦さんがイイ人になる意味が分からない。
だけど、父は付き合いが長いから認めているのだろうし、突っ込みはしない。
母に上機嫌の理由を暴露されて、今度こそ父が不機嫌になりそうなのが怖かった。
「…はい、お父さんは焼酎ね。熱いから気を付けて。」
でも、長年夫婦をやってる母からしたら御しやすいもののようで。
話をさっと切り替えて、お湯割を作ったグラスを父に渡していた。
私達の扱いは適当で、冷蔵庫から勝手に取って来いという。
溜め息を吐きながら立ち上がろうとした時、妹に手を掴まれて動きを制された。
「私が行ってくるよ。京治、一緒に来てくれる?」
「はいはい。」
2人が殆ど同時に立ち上がり、部屋から出ていく。
「なぁ、アイツ等、大丈夫か?」
閉められた襖を眺めながら、秋紀が不安気に呟いていた。