第13章 pray
「超嬉しぃ」
「良かった…断られたらどうしようかと思ったよ」
「断る訳ないじゃん、俺も大好きなのに…でも俺でいいの?」
「うん」
ハイテンションな松潤の声とホッと安堵したような智くんの声…そっか、智くんの好きな人って松潤だったんだ。条件に全部当てはまる。
イブの夜は松潤は先に予定が入ってたから智くんの誘いに乗れなかったんだ。あいつ友達思いだもんな。
それに18年前って嵐が結成した時じゃん。
その頃から智くんは松潤が好きだったんだ。俺、気が付かなすぎじゃね?こんなに近くでふたりのこと見てたのに…
ごめんね、智くん。知ってたらもっと話聞いてあげられたのに。でも、良かった…両想いだったんだ、俺がプレゼンするまでもなかった。
「おめでと…智くん」
ドアの前で呟いてその場を立ち去った。
行き場を無くした俺はフラフラとライブ会場までやって来た。スタッフさんたちが忙しく動き回る中、客席に座りボーッとしてた。
どれくらいそうしてたんだろう…
「いたっ!翔くん!」
「え?」
慌てて駆け寄る智くんの姿が見えた。
「どうしたの?こんなところで…もう着替えないと間に合わないよ?」
「え、もうそんな時間?」
「うん、翔くんのことだから時間には戻ってくると思ったんだけどメイクの時間になっても帰ってこないから先に松潤に行って貰ったよ?」
智くんの口から松潤の名前を聞いてドキッとした。
「ごめんね…迷惑掛けちゃった」
「俺は大丈夫…翔くんの世話やけるのは嬉しいから、でも松潤にはお礼言っときな?」
「うん…わかってる」
また心臓が鳴った…なんだろ、智くんの口から松潤の名前聞きたくないかも…これ、『ドキッ』じゃなくて『ズキッ』だ…