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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第24章 二つ島~治療~ ★


 明かり取りの窓からは太陽の光が降り注ぐも、船室は窓からは離れる程に暗くなる。
その中間当たりにある大きめのベッド。
その白いシーツを引かれた場所だけが、鏡で照射された光とランプの明かりに照らされてくっきりと浮き出ていた。
そのさらに中央に座っている沙羅の背中は照射された光を、一直線に浴びて一際明るい。その光を遮らない位置に座る男、マルコ。
「ッ・・・」
俯いた沙羅から、声にならない声が漏れ出る。
何かに耐えているのだろう。
胸元を覆うバスタオルを握る沙羅の手に力がこもる。
その全てを無言のまま涼しい顔で見下ろしているマルコ。
その回りには消毒液やガーゼなどが並んでいる。
マルコの眼下には、背中を無防備にさらした沙羅が座っている。
手慣れた様子で背中の傷の具合を確認し、消毒していくマルコ。
「少し、しみるよい」
「・・・っ!~」
背中を走る痛みに、思わず声が漏れる。
その声に僅かに目を細めるも、マルコは淡々と治療を続ける。
節くれ立った武骨な指が、背中の傷を縫い合わせた糸を滑るように繊細にたどる。
マルコの息が、微かに沙羅の背中をくすぐる。
「本当にいいのか?」
マルコの問いに、頷く沙羅。
「俺としては、もう少し日を置くべきだがねい?」
マルコの反対意見に沙羅は首を小刻みに横に振ると、振り返った。
「痛くて、耐えられないの・・・」
瑠璃色の瞳が苦しそうに揺れる。
「お願い・・・抜いてっ・・・」
苦しげに涙を滲ませる沙羅に、マルコは己の中でぐつりぐつりと煮えたぎる欲という名の熱を冷ますように、小さく息を吐いた。

“卑猥だよい”

いったい今まで何度、無意識の誘惑に煽られたことか。
だが、ここまで彼女が追い詰められた原因は自分にある。
啼かせたいとは思うが、泣かせたくはない。
マルコは宥めるように頭を撫でると口を開いた。
「痛み止め打つかい?」
「・・・大丈夫」
少しの逡巡の後、否と返した沙羅の言葉に頷いたマルコは、手元に用意していた医療用のハサミやピンセットを広げた。
迷うことも震えることもなく、慣れた手つきで傷口を繋げていた糸を、抜糸していくマルコ。
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