第23章 二つ島~危機~
そんな中、渦中の人物となった沙羅は痛み止めの効果で、すやすやと眠り続けていた。
翌朝。
目覚めた沙羅は、見舞いに訪れたマルコの去り際の言葉に唖然とした。
『言い忘れたよい』と扉を開けかけて振り返ると、
『今日から一番隊副長だ、よろしく頼むよい』
そう言い残し、扉を閉めたマルコ。
突然過ぎる隊異動。
訝しむも皆から一様に『モビーの平和の為だから』と言われ、
終いには白ひげに、
『どこの隊でもお前らしくいりゃいい、それともマルコが隊長じゃ不安か?』
と言われれば、首を横に振り、それを受け入れるしかなかった。
一方、遠く離れた黒い船で、その号外を愉快そうに眺める悪魔が一人。
「笑い事じゃないでしょう」
「面白いじゃないか、たかだか数億の男や何の役にも立たない奴らに隊長達が出てきたんだ」
「白ひげも本気だってことでは?」
ムサシの言葉にゾイドはさらに笑った。
「そうさ、世界最強と呼ばれる男が、娘一人のために愛する家族“様”を危険に曝している、沙羅さえ、差し出せば済むものを・・・」
「それが白ひげでは?」
鉄の団結力で結ばれている白ひげ海賊団なら、当たり前の反応だと、ムサシは疑問を呈した。
体するゾイドは、疑問には直接答えずに薄らと笑った。
「家族ごっこは、お終いだよ、あいつらが全員、平等に家族を大事にしてるわけじゃない・・・」
感情の見えない笑みを浮かべると、ゾイドは手にしたナイフを写真に向かってなげた。
刺さったナイフの隣には、ビスタが移っていた。
悪魔はすぐ近くまで手を伸ばしていた。