第14章 本当の事
『ちょ!!坂本さんたちはちょっと待っててください!!』
私はそう言うと、トシを引っ張って行った。
廊下の角で私は止まる。
そして振り返った瞬間、私の横にドン!と大きな音を立てて手がつかれた。
土「瑠維、どーゆーことだ?これは?」
『えっと・・・・・屯所の修理費は坂本さんが出してくれるから・・・・』
土「そのことじゃねぇ!!」
すっごいご立腹だよ・・・・
土「宇宙に行くってのはどうゆうことかって聞いてんだ!!」
耳が痛くなるくらいの大声だった。たぶん屯所中に響き渡っただろう。壁とトシに挟まれた私に逃げ場はない。
『春雨に・・・・』
土「戻るのか!?」
『違う!!晋助に会いに行くの!』
私が言い返す。その時に初めてトシの顔を見た。
『っ!?』
トシの顔は泣きそうに歪んでいた。初めて見る表情だった。
土「本当の事なんざァ、知らなくたっていいだろ・・・・」
『トシ・・・・』
土「知ることでお前はさらに傷つくかもしれねーんだぞ?わざわざ・・・・・」
トシはそこで言葉を濁した。そのままついていた手をはずし、背を向けた。
その背中はかすかに震えていた。
土「俺ァ・・・・・」
『・・・・トシ・・・・大丈夫、私は絶対帰ってくるから』
そんなトシの背中に抱き着いた。
泣いてはいないようだが・・・・・見てられなかった。
『大丈夫』
土「・・・・」
『だから見送ってよ』
私はトシの前に回り込むと顔を見つめた。
『きまり、トシが作ったよね?』
土「ああ」
トシの首に腕を回した。そのまま背伸びをする。
『行ってきます』
触れるだけのキスをする。