第27章 小さな太陽と大きな背中
でもなぁ・・・紡の父親って会った事も見た事もないし、イメージが浮かばないよ。
普段から家にはあまり居なかったって聞いてるし、今は海外にボランティア医師団として行ってるって聞いてるし。
じゃあ紡の1番近くにいる男性・・・ってなると?
桜太さんと・・・慧太さん・・・に、なる訳だけど・・・
どう考えてもムリだろ!!
不戦敗じゃないか!!
戦う気力も、立ち向かう勇気も・・・今のところ起きない。
「紡の好きなタイプってどんなだろう・・・」
『私の好きなタイプが知りたいんですか?』
「うわぁっ!!!・・・つ、紡?!いつからそこに?!」
思わず声に出た呟きに答える声に、未だかつてないほどの驚きを見せてしまった。
『今さっきからいましたよ?何度か声かけたんですけど、大地さん凄く険しい顔で何か考え込んでて・・・』
全然・・・気が付かなかった。
しかも、険しい顔って・・・
「あ、あは、は・・・何でもないよ」
『そうですか?かなりハッキリ聞こえちゃったんですけど・・・一応、教えた方がいいですか?』
「だ、大丈夫だよ・・・気にしないで」
行こっか?と声をかけ、それまでの話をすり替えた。
『あ、お弁当ですけど、スガさんや影山達とよく食べる場所があるですけど、そこでいいですか?』
「お任せするよ。それより・・・松葉杖、危なっかしいな」
そう言うと、まだ慣れなくて・・・なんて笑って返す。
・・・慣れなくていいんだけどね、ケガしないって事だから。
『足もそうですけど・・・頭のタンコブも、まだ少しあるから髪が上げられなくて・・・』
「あぁ、頭を打ったところか。触っても平気?」
『どうぞ?・・・ここの辺りに・・・』
軽く髪を掻き上げられた場所に、そっと手を伸ばす。
「そんな気にする程でもないと思うけど?」
『そうですか?でも・・・やっぱり気になります!』
触れた指先は、ほんの少しだけの膨らみを捉えたが・・・
それでも気になるのは、女の子だからなのかな?
乱れた髪を軽く手櫛で整えて、はい、元通り・・・なんて笑って見せた。
『行きましょうか?大地さん、お腹空いてますよね?』
そうだね、と頷こうとした時。
菅「おーい!紡ちゃーん!」
スガ?
『今の声って、スガさん?でしたよね?・・・どこからだろう』