第26章 交差する想い
桜「明日?・・・へぇ、そんなに俺と帰るのがイヤ?」
はい・・・お説教タイムが待っていると思うと・・・とは、言えない。
『お、桜太にぃはいつも忙しいから、疲れてるかなぁとか・・・慧太にぃは、ほら!その、人生アバウトに生きてるから平気かな?なんて』
ー 優しいねぇ、妹さんは。あ、ねぇ、彼氏いるの? ー
『えっ?!い、いません、けど』
急になに?!
なんで私、そんなこと聞かれてるの?!
ー マジ?!じゃあさ、元気になったらデートしない?あ~、その辺すっ飛ばしてお嫁さん候補でもいいんだけどさ! ー
な、なんだろう・・・なんか矢巾さんを思い出すような、この軽い感じ・・・
桜「・・・立花先生?少しご冗談が過ぎませんか?」
コホン、と咳払いをしてから、桜太にぃが間に割って入った。
ー 城戸先生・・・目が、笑ってませんよ・・・? ー
桜「そんな事ないですよ?俺は至って普通です」
いいえ・・・その顔は、完全に怒り出す直前です。
過去に2度程、覚えがありますよ?
連絡なしに門限を破ってしまった時と。
今ひとつ点数が良くなかった答案用紙を見せずに隠していた時と。
・・・立花先生、早く逃げて下さい。
私は助けてあげることが、きっと出来ません。
その空気を読んだのか、立花先生はニコニコっと笑って・・・じゃ、そういう事で!と部屋から出て行った。
『た、楽しい先生だね・・・』
桜「俺はいつも被害にあってるんだけどね。俺より10歳も上なのに、いつもあんな感じで」
いつも・・・だったのね。
っていうか、そんなに年上だったんだ?!
桜「とりあえず慧太に連絡するから、それまで待ってて」
桜太にぃはそう言いながら、私の頭をひと撫でして部屋から出て行ってしまった。
それから少し経って、私の明日の退院が決定した。
予定より早い退院に、私はウキウキと心踊らせ、みんなに連絡しなきゃとスマホを手に取った。